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平成31年度名寄市立大学入学式 学長告辞を公開しました。

2019年入学式告示

 本日ここ名寄市立大学に入学された新入生の皆さん、おめでとうございます。教職員を代表して心からお祝いと歓迎の意を表します。皆さんを新たな仲間としてお迎えすることは、私たち教職員にとっても大変喜ばしいことです。ご列席の父母・保護者の皆様にも、心よりお慶び申し上げます。

 また、年度初めのお忙しい中ご臨席を賜りましたご来賓の皆さまにも心より感謝申し上げます。

 本日入学された皆さんは197名です。一般入試、推薦入試、社会人選抜など多様な入学試験を経て入学されました。皆さんに数ある大学の中から名寄市立大学を選んでいただいたことは、大変うれしく思います。大学選択は、以前ほど学歴偏重社会でなくなったとはいえ、人生の大きな岐路であることには変わりありません。その中で、名寄市立大学に将来を託していただいたことを、私たち教職員は重く受け止めています。

 さて皆さんがこれから4年間の大学生活を送るに当たり心がけるべきことについてお話しします。経済産業省が実施した調査によりますと、企業が学生に不足を感じている力は「主体性」「コミュニケーション力」「粘り強さ」などであります。それに対して、学生は「語学力」「業界の専門知識」を自分に不足している能力としてあげています。企業側が学生に求める能力と学生が企業側から求められていると考えている能力要素にギャップが存在します。学生は、例えばグローバリズムといえば語学力・TOEICの点数などを考えると思いますが、語学力は確かに大事ですが、本当に大事なのは日本人としてのアイデンティティや日本の文化に対する深い理解を前提としたコミュニケーション能力、主体性・積極性、異文化理解などであります。

 社会で求められる「主体性・粘り強さ・コミュニケーション力」を習得するには読書や新聞を読むことを勧めます。2018年の大学生活実態調査結果によりますと、授業を離れた1日平均読書時間が30分と小学生以下であり、ゼロ時間の大学生が48%占めていたということです。

 今はインターネットやSNSなどでニュースや社会の出来事が簡単に見ることが出来ますが、そこで得られた情報は浅い理解で終わります。ネットで文章を読むことと、本を読むことは違います。ネットで何か読もうというときは、そこにあるコンテンツにじっくり向き合うというより、短時間で必要な情報を収集することに重きが置かれます。一つのコンテンツに向き合う時間は短くなってしまいます。現代人の集中力が低下していることを示す研究もあります。2015年にマイクロソフトの発表では、現代人のアテンション・スパン(一つのことに集中できる時間)はたった8秒とのことです。2000年には12秒だったものが4秒も短縮したと言います。 これは間違いなくインターネットの影響だと言われています。

 とくにスマートフォンが普及して、スマホで常にいろいろな情報にアクセスしたり、SNSで常に短いやりとりをしたりするようになったことで、ある意味「適応」した結果です。一方、最後まで一冊の本を読み切ることは、それは「体験」としてしっかりと刻み込まれます。読書は「体験」なのです。 体験は人格形成に影響します。自分一人の体験には限界がありますが、読書で疑似体験をすることによって、視野を広げ、人生観、人間観を深め、想像力を豊かにし、人格を大きくしていくことができるのです。

 また、読書により感性が磨かれます。相手の気持ちを察する、これがコミュニケーションでは非常に重要になります。

 いま、文部科学省は大学入試改革を進めています。従来の知識偏重型の選考方法から、「自ら課題を見つけ、周囲と協力して解決する力」を問う選考方法に変更するというものです。なんとなく従来の知識偏重型から「ゆとり教育」への転換をイメージされるかもしれませんが、それは大きな間違いです。一定の知識を備えたうえで、さらにその知識を活用できるかどうかが問われる方向に変わるということです。しかし、従来の受験勉強が知識偏重と言われながらも、それ相応の努力をすることで、自己鍛練、自制心などの、基礎力も磨かれ、高校生の勉学へのモチベーションとしての大学入試のメリットは無視すべきではありません。受験勉強で一定の目標を達成することは、継続的に努力する能力があることを証明したことになります。今回入学を許可された皆さんは、幅広い知識と教養、実践力を修得する大学での教育を遂行でき、社会が求める「忍耐力、持続力」を身に付ける資質があると認められたのです。大学4年間では、勉学、サークル活動、遊び、アルバイト、何事においても一生懸命取り組み、その資質をさらに磨き上げて下さい。

 先日、大リーグ、シアトル・マリナーズのイチロー選手が引退しました。野球選手として数々の大リーグ記録を塗り替えた偉大なプレイヤーでしたが、彼が残した成績だけではなく、野球に人生のすべてをささげてきた彼のストイックな姿、また人にとしての素晴らしさが、多くの人に愛され、尊敬を集めた理由だと思います。その彼の言葉を最後に紹介します。

 「努力せずに何かできるようになる人のことを「天才」というのなら、僕はそうじゃい。努力した結果、何かができるようになる人のことを「天才」というのなら、僕はそうだと思う」。大学生活の4年間は決して長い時間ではありません、一日一日充実した日々を送ってください。日々の小さな努力の積み重ねの結果が、やがて大きな差になります。皆さんの健闘を祈ります。

平成31年4月3日

名寄市立大学学長

佐古和廣

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